つなぎの工夫:イナバウアー、イーグルなど

ここでは、フィギュアスケートの演技の中で、地味ながら重要な役割を果たす「つなぎ(トランジション)」について解説します。

競技の中では、華やかジャンプやスピンに注目しがちですが、フィギュアスケートのプログラムは、それ以外のたくさんのエレメンツによって成り立っています。こうした「つなぎ」を丁寧に行うことで演技に厚みを持たせることができます。

つなぎ(トランジション)の種類

つなぎには、いくつか種類があります。

  • ステップやターンなどフットワークのつなぎ
  • スピードの緩急などスケーティングスキルによるつなぎ
  • 頭を振ったり重心を移動させるボディムーブメントのつなぎ
  • エレメンツにカウントされない技のつなぎ(イナバウアー、イーグルなど)

イナバウアーについて

トリノオリンピックの荒川静香さんの演技で有名になった技です。足を前後に開き、つま先を180度開き、前側の足は曲げて、後ろ足は延ばした状態で滑っていきます。更に荒川選手は顔がさかさまになるまで強く背中を反らす「レイバック」と呼ばれるタイプのイナバウアーを得意としていました。腰から背中、手先へとつながるなめらかなラインがきまると大変美しい技です。

イーグルについて

イナバウアーと似ている要素として、イーグルが挙げられます。このイーグルは、つま先を180度開き、両足の膝を伸ばして滑るものです。静かでゆったりとした場面や、空間の広がりをのびのびと表現する際に用いられます。背中側を剃らせ、上半身は斜め上に向けて胸を開きます。そのままスピードを出して深いエッジに乗り、斜め上を見上げるように演技すると、壮大さやエネルギッシュさを表現できます。
イナバウアーが足を前後にしているのに対し、それを真横にしたものがイーグルになります。

名前がついていない「つなぎ」もある

イナバウアーやイーグルのように、わかりやすい技として認知されているものもありますが、つなぎにはとくに名前がついていないものも多くあります。要素と要素をなめらかにつないで演技全体を美しく豊かなものにするための全ての動きが「つなぎ」であると言えます。
名前のついていない「つなぎ」として、例えば、体幹の使い方や重心移動があります。

体幹の使い方や重心移動も美しい「つなぎ」の大事なポイント

例えば、滑りながら重心を右のお腹と左のお腹に交互に動かすと、身体全体がゆらゆらとゆれて、まるで川の流れのような表現ができます。
また、重心を体の中央の体幹に正しく乗せられれば、仁王立ちのように左右の足を大きく開いても倒れません。この場合大変深いエッジに乗ることをアピールでき、表現の幅も増えることとなります。

つなぎの得点について

つなぎは、それ自体に基礎点がついているものではありません。つまり、イナバウアーやイーグル自体を美しく行っても点が加算されるわけではありません。
ただしジャンプやスピンなどの基礎点がついている技の前に行うと、「難しい入り方で技に入った」と評価され、ジャンプやスピンにGEOが加算されることとなります。例えば、羽生結弦選手は、かつて、イーグルからトリプルアクセルを跳んでいました。
更に、演技自体を美しく彩ることで演技構成点の「つなぎのフットワークと動作」の項目で高評価を獲得することもできます。

このように、ジャンプやスピン以外の「つなぎ」にも、選手たちの隠された努力が存在し、演技全体を美しく作り上げるための大事な役割をになっています。