スピンの基本姿勢:美しく回るための体軸、ブレードへの体重の乗せ方

ここでは、フィギュアスケートの技の一種であるスピンの基本姿勢について詳しく解説していきます。

氷の上でくるくると美しく回転して演技に華やかさを添えるスピンですが、陸上ではこのように高速回転をすることはできません。選手たちはどのような原理を利用してスピンしているのでしょうか。

美しく回るための基本姿勢

スピンは、渦巻き状に滑走しながら徐々に円を小さくしていき、最終的には一点で回ることにより力をひとつのポイントに集め、大きな回転力を得る仕組みです。

円の描き方は、まず大きな円を滑り、エッジを深めることによりだんだんカーブを急にして小さな円を回り始め、前向きから後ろ向きへのターンをきっかけにすることで体の軸を作り、それまで持っていたパワーを回転力に転換します。また、空いている手や滑っていない足(フリーレッグ)を外に広げているよりも、体軸に引き寄せたほうが、より回転力が増して高速回転できるようになります。ただし手やフリーレッグを引き寄せるタイミングを誤ると体軸がぶれて転んでしまいます。そのため、はじめは回転速度が遅めでフリーレッグや空いている手でバランスをとりながら体軸を探し、体軸が定まったら身体の中心に手足を引き寄せて回転を速めることとなります。

 

体軸って?

体軸とは、頭、胸、腹、腰、足元の重心を一直線に貫く、仮想の軸のことです。スピンでは滑る足により右軸か左軸を使用することになります。胸部の筋肉が使えずに胸が開いていたり、腰が引けてたりすると体軸がぶれて美しいスピンが回れません。レイバックスピンやキャメルスピンのように、頭や足が体軸から大きく出ているスピンでも、体軸は中心にありバランスをとっています。

体軸が整っているスピンは、はっと目を引く美しさがあります。

 

スピンは体軸が命

スピンで最も重要なのは体軸です。では選手たちはどのようにして体軸が整う美しいスピンを身に着けているのでしょうか。

実はスピンは、フィギュアスケートの技の中でも「練習量が命」と言われます。運動センスや筋肉よりも、体軸に乗るコツを見つけることが重要だからです。

一度自分の体軸に乗るコツが分かれば、あとは無理に力や筋肉をつかわずとも楽にスピンできるようになります。

体軸に乗るコツさえ身に着ければ、どんなスピンも楽に回れる

たとえばレイバックスピンなどはかなり無理な力をいれて反っているように見えますが、実は股関節に重心を乗せて安定させてしまえば、頭や足を外に投げ出しても問題なく回れます。また、シットスピンも、地上で同じ体勢をすると片足に全体重が乗り大変苦しいですが、氷上で回る際は遠心力によって、お尻と、滑っていない足(フリーレッグ)が双方に引っ張られるので、その間でうまく重心をとれば楽に回れるようになります。

ブレードのどこに乗るか

また、体軸が靴のどこに来るかも非常に大事です。

スケート靴のブレードには、母指丘のあたりに少しカーブがきつくなっている場所があります。ここは氷との接触面積が最小になるため「スイートポイント」と呼ばれており、ここに重心をうまくのせれば摩擦が少なくなり美しいスピンを回ることができます。

スケート選手はスピンで回ってもめまいは起こさないの?

脳は三半規管から伝えられた情報によって目の動きを調節しています。たとえば、頭が右に向いたら目は逆の左方向へ向くように統制されているので、普段は頭を動かしても目が回らないようになっています。ところが、通常行わないような急激な回転すると、三半規管の混乱によって脳が目の動きを調節出来なくなるため、目がグルグル回ってめまいが起こります。

ただし、三半規管は鍛えることができます。スケート選手は小さなころからスピンの練習をして慣れているので目は回りません。大人になってからスケートを始めると、最初は目が回ることがあります。

安藤美姫選手は、実験として約10分1,000回転しても全く平気だったと言っています。ただし五輪金メダリストの荒川静香さんは「ジャンプの後は、目が回ることがある」とも言っています。鍛え方にも個人差が出てくるものなのかもしれません。

スピンは高齢の選手でも衰えない

ジャンプは年齢を経ると飛ぶのが難しくなりますが、「練習量が命」と呼ばれるスピンは、年齢を重ねるほど自分の体重を乗せるポイントが分かり技術力が高まっていきます。

28歳以上72歳以下の、大人になってからスケートを始めた選手が出場する大会「国際スケート連盟アダルト選手権」では、ジャンプはほとんどの選手が1回転ですが、スピンは若い選手に負けないほどの高速回転が披露されます。60代女子のカテゴリーでは、すべての選手がキャメルスピンとシットスピンを行いました。

このように、選手の努力や熟練した技術が滲み出るのがスピンという技なのです。