スケート靴について:エッジ、トゥピックなどを解剖

ここでは、フィギュアスケート選手の命であるスケート靴について解説します。

テレビなどで、フィギュアスケートの選手たちがインタビューの際に靴の不調を訴えるのを目にしたことがある人も多いと思います。フィギュアスケート選手にとって命である靴は、演技を左右する重要な要素であるとともに大変繊細なものであるため、購入時、メンテナンス、大会直前のケアなど、常に非常に細やかな気配りがなされています。

 

スケート靴の購入

スケート靴は手作業で作られます。同じメーカーの同じ型番でも、携わる職人の手のクセや、靴の上部分と底部分を合わせるときにの微妙なズレなどがあるため、100足あれば100通りの仕上がりとなります。

オーダーメードの靴も存在しますが、たとえ選手の足型をとっても必ずしもその靴がぴったり合うということはないため、既製品を購入し、カスタマイズしていく選手が多いようです。選手の中には、納得のいく靴とブレードの組み合わせが出来るまで何年もかかる人もいるそうです。

 

スケート靴の素材と値段

革でできています。靴のメーカーや種類によって皮の硬さやヒールの高さは異なります。私達が履く革靴と同様、購入したばかりの靴は革が硬いため、履いて慣らす必要があります。また、値段が高い、トップ選手が使うような靴ほどはじめは硬いです。

革と革の間に形状記憶するプラスチックが挟まっており、専用のオーブンで温めてから足を入れ、整形をする靴もあります。

なお、トップ選手が履くような靴の価格は5万~10数万円程度だそうです。

 

靴の慣らし方

上記のとおり、靴を慣らす期間が必要なので、大会前のかなり早い段階から靴のコンディションを整えなければいけません。

靴の履き始めは靴ずれになることも多いため、競技歴の長い選手の中には土踏まずのあたりに傷があったり、かかとやくるぶしなどの部分がぷっくりと膨れ上がったりしている人も多いそうです。

こうした履きならし作業を経て、ベストコンディションの靴に育てていくのですが、履きつぶして柔らかくなりすぎてしまった靴は、もう使うことはできません。

高度な技ほど靴に負担がかかり、柔らかくなるのも早くなります。トップ選手は3~4カ月で履きつぶしてしまいます。

このように大会に合わせて靴を調整するのはかなり気を使う作業となります。この靴で今シーズンは挑もう、と決めたとしても、もし壊れたり、軟らかくなりすぎてしまったために、別な不本意な靴で挑んだ場合は、演技に大きな影響を与えます

トップ選手は、大会シーズンを迎える前に、何足も靴の候補を用意し、実際に履いて慣らしてから、何足かを残していくようです。

 

靴の慣らし方の個人差

靴の慣らし方については、選手によって好みの慣らし具合があります。プラスチックを挟んでいる靴は、革の中でプラスチックが折れてしまうことがありますが、プラスチックが折れる前の硬さが好みの選手と、プラスチックが折れて少しやわらかくなった状態が好みの選手がいるそうです。

 

エッジについて

フィギュアスケートの刃は、ブレードは、ナイフのような鋭利な刃ではなく、3ミリ程度の幅があります。真ん中がへこんでいて、両サイドがそれぞれ刃のようにとがっています。これを「エッジ」と言い、このおかげで左や右に滑らかに曲がったり、複雑で繊細な動きができるようになっています。

 

トゥピックについて

つま先側についているギザギザの部分は、フィギュアスケート靴特有のトウピックと呼ばれるもので、ジャンプの踏み切りや着氷、スピンに入る時に活躍します。刃がまっすぐのスピードスケートの選手が履くと、トウピックに引っかかって転んでしまうそうです。

刃は靴にビスで取り付けます。O脚やX脚といった選手の足のクセや骨格、靴のクセなどを考慮した上で取り付けます。わずか1mm動かしただけでもジャンプが跳べなくなったりするなど、かなり繊細さを要求される作業です。

 

エッジの手入れについて

エッジは、包丁と同じく、定期的に研磨を行います。刃を研ぎすぎるとスピンが回りにくくなりますが、あまり研がずにいると、横滑りをして転びやすくなります。そのため、試合時はもちろん、オフシーズンでもメンテナンスを行います。エッジの寿命は約1年と言われています。長く使いすぎるとゆがんだり、折れたりすることもあります。

 

靴全体の日々の手入れ

革で出来ている靴は、水分がついたままロッカーなど風通しの悪いところにいれてしまうとカビがつくことがあります。中敷きを取り、風通しの良いところに保管します。

刃の部分は、水分が付いたまま放置すると錆びるため、滑った後は、タオルでふき、数滴油をひいておきます。さらに、しまうときは、布製のカバーを被せます。

 

 

このように、選手たちはスケート靴に大変気を使っています。荒川静香選手は「靴はできるだけ肌身離さず持っていたい。最近、航空会社のルールが変わり、スケート靴のブレードが刃物に当たるとして機内に持ち込めなくなった。預ける荷物の中にスケート靴を入れる時は、万一紛失したらどうしようといつもヒヤヒヤしている」とコメントしています。