フィギュアスケートで使用される音楽について

ここでは、フィギュアスケートの演技の雰囲気を決める重要な要素である音楽について、詳しく解説していきます。

フィギュアスケートの演技に使用される音楽は、クラシックや映画のサウンドトラック、ジャズ、民族音楽など、多岐にわたるジャンルから選ばれます。

 

選曲のルール

演技で使用する音楽にはいくつか規定があります。まず、曲の長さですが、以下の通りとなっており、それぞれプラスマイナス10秒まで許されています。

男子シングル

ショートプログラムが2分50秒、フリースケーティングは4分30秒

女子シングル

ショートプログラムが2分50秒、フリースケーティングは4分

ペア

ショートプログラムが2分50秒、フリースケーティングは4分30秒

アイスダンス

ショートダンスが2分50秒、フリーダンスは4分

選曲は全て選手の自由です。ただしアイスダンスのパターンダンスのみ、予め指定されたリズムとテンポの音楽を用いることとなっています。それ以外にも、アイスダンスのフリーダンスは、「音楽はリズム・ビートを伴うものでなくてはならない。メロディのみの音楽は不可」などの制約があります。

 

歌入りの音楽について

以前は、アイスダンス以外ではヴォーカル入りの音楽は減点対象(-1点)だったのですが、2014-15シーズンより使用して良いことになりました。これにより2014年12月のISUグランプリファイナルでは、男女シングル12人のうち9人がヴォーカル入りの音楽を使用しました。

 

選手の曲選びの基準とは

選手にとって、演技で曲想を表現することになる楽曲を選ぶことは非常に重要な作業であり、頭を悩ませるポイントでもあります。曲を決めるプロセスは人によって様々なようで、振り付け師やコーチのすすめたものを選ぶ場合や、その年ヒットした映画、ドラマなどから決める場合もあります。2013-2014年シーズンは、ヒットした映画の音楽「レ・ミゼラブル」を使用する選手が多く見受けられました。また、現役最後の年に澤田亜紀選手が使用した音楽は大河ドラマ「篤姫」の曲でした。

また、自分の技が映える曲や、自分の雰囲気に合った曲を使用することも重要です。たとえば足さばきが得意な選手は軽快なステップが披露できる曲、ジャンプのダイナミックさがウリの選手であれば力強い曲を使用する等です。

 

選曲の傾向

フィギュアスケートの演技でよく使用される音楽とはどういったものでしょうか。また、使用される音楽と演技の関連はどのようなものでしょうか。以下で解説していきます。

 

オペラ音楽、映画音楽はストーリーを表現できる

物語性を演技で表現したい場合は、オペラや映画の音楽が使用されます。フィギュアスケートにおいて多用されるオペラは、プッチーニ作曲『トゥーランドット』『蝶々婦人』などです。また、映画音楽では『ムーランルージュ』『オペラ座の怪人』『シカゴ』などがよく使用されます。

東ドイツのカタリーナ・ビット選手による1988年のカルガリーオリンピックの『カルメン』の演技は、その妖艶さと表現力において伝説的な存在となっています。

また、2010年のバンクーバーオリンピックでは、韓国のキム・ヨナ選手が『007』のジェームズ・ボンドのテーマ曲を使用し、ボンドガール風の演技をして人気を博しました。

 

ピアノ音楽は繊細な動きにぴったり

ピアノ曲は、オーケストラ曲などと比較すると音数が少なく迫力には欠けますが、その分繊細な表現やしっとりとした情緒を表現したい選手には好んで使用されます。

よく使われるピアノ曲は、ショパン『幻想即興曲』『別れの曲』『夜想曲』や、ドビュッシー『月の光』『パガニーニの主題による狂詩曲』などが挙げられます。

浅田真央選手といえば、ラフマニノフピアノ協奏曲第二番のイメージが定着している方も多いかもしれません。

 

オーケストラ音楽は定番

音の厚みやダイナミクスが豊かなのがオーケストラ楽曲です。多くのフィギュアスケート選手がオーケストラの曲を使用します。リムスキー作曲『シェヘラザード』、チャイコフスキー作曲『ロミオとジュリエット』、ハチャトリアン『剣の舞』、マスネ作曲『タイスの瞑想曲』、サン=サーンス『死の舞踊』などがよくつかわれます。

1984年のサラエボオリンピックのアイスダンスにおいて、イギリスのジェーン・トービル選手とクリストファー・ディーン選手がラヴェル作曲『ボレロ』を使用した演技が、前代未聞の審査員9人全員に芸術点6点満点で評価され、伝説的な存在となりました。以来この曲は永久欠番のように20年もの間使用されずにいたのですが、その伝説を作ったディーン選手自身が振付師となってミシェル・クワンが演技し、その後は再び様々な選手が使用するようになりました。

 

バレエ音楽の根強い人気

バレエの柔らかくてなめらかな動きや芸術性の高さを表現したい際に使用されます。特に人気の高い曲は、チャイコフスキー作曲『くるみ割り人形』『白鳥の湖』などがあげられます。

白鳥の湖といえば、日本でも浅田真央選手、荒川静香選手、村主章枝選手、羽生結弦選手など多くの選手が使用している定番のプログラムです。

更に、2007-2008シーズンに高橋大輔選手が白鳥の湖のヒップホップバージョンを披露したことが記憶に残っている方も多いかと思います。