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宮原知子、本田真凜、白岩優奈…次世代の女子フィギュアを支える濱田美栄のコーチ哲学

2015年-16年シーズンがもうすぐ終わろうとしているが、グランプリファイナルでも世界ジュニア選手権でも、宮原や本田、白岩ら、濱田の教え子がロシア女子と互角に競り合う試合を何度も目にしてきた。来シーズンに向けて、濱田チームがさらなる躍進を遂げることを楽しみに待つことにしたい。


日本には、今日のフィギュアスケートの発展を支えてきたコーチが数多くいる。グルノーブルオリンピックに出場し、選手強化に長年尽力してきた樋口豊、浅田真央らを指導し、世界フィギュアスケート殿堂入りした佐藤信夫、本田武史や鈴木明子ら名選手を育て、現在は本郷理華を指導する長久保裕などだ。そんな中で、近年、教え子を次々と世界の表彰台に送り出して注目を集めているコーチがいる。関西に拠点を置く濱田美栄だ。

濱田は現在、宮原知子、本田真凜、白岩優奈など、才能ある女子選手を多く抱えている。日本の次世代の女子フィギュアを支える一人だ。

ここでは、International Figure Skatingで、濱田美栄が、コーチとしての信念や、教え子に対する思いを語った記事(注:濱田の発言部分は英語からの翻訳)を紹介したい。

 

選手人生を諦めて

多くのコーチがそうであるように、濱田もフィギュアスケートの選手として試合に出場していた時期があった。競技生活から引退し、コーチに転身した契機について、濱田は次のように語っている。

絵美(注:渡部絵美)は私よりもずっと上手なスケーターでした。私は特に才能があるわけではありませんでした。

もしかすると、スケーターとしては達成できないことがあったからこそ、自分はコーチになれたのかもしれません。もちろん、自分が望むもの全てを達成してキャリアを締めくくることができたら素敵なことでしょう。でも、そうした夢がたとえ叶わなかったとしても、そのエネルギーを別の道に使うことができるのです。とても幸運なことに、私にはそうすることができました。

全日本選手権を8連覇し、日本の女子選手としてはじめて世界選手権でメダル(1979年世界選手権銅メダル)を獲得した渡部絵美と濱田は、ともに1959年生まれの同い年である。自分にはスケーターとしての才能がないのではないか。同世代の選手が華々しく活躍するなかで、そのような思いが胸をかすめたこともあったかもしれない。しかしそれこそが、濱田がコーチとしての道を歩む原点となった。

 

宮原知子と歩んだ道のり

濱田は宮原知子を小学2年のときから指導している。二人三脚で歩んだ道のりを、彼女は次のように振り返る。

知子はとても練習熱心で、本当に素晴らしいです。彼女は決して文句を言わず、こちらが要求することをやります。それだけでなく、彼女は自分で考えながら練習します。

はじめは、知子が世界選手権で滑るようになることを目標にしていたわけではありませんでした。毎日少しずつ改善して、どんなスタイルの滑りがいいのか、どんなスケーターになりたいのか考えながらトレーニングしました。その結果として、世界選手権に行けるようになりました。彼女が日々積み重ねていることの延長線上にあったのです。

宮原は、今では世界選手権銀メダリストの肩書きを持つトップスケーターだが、世界ジュニア選手権で表彰台に上がった経験はなく、ジュニア時代から華々しい活躍をしてきたタイプの選手ではない。努力家で、黙々と練習を重ねる宮原を、濱田はずっと支えてきた。どのようなスケーターになれるか思い描きながら、照準を定め、日々のトレーニングを積み重ねた結果として、彼女は今の場所にいる。

 

カロリーナ・コストナーのような滑りを

濱田は教え子にどのような滑りを求めているのか。濱田がお手本とする一人の女性スケーターがいる。イタリアのカロリーナ・コストナーだ。

(写真)ソチオリンピック銅メダリストのカロリーナ・コストナー。滑りの質の高さに定評がある


私はコストナーが大好きです。彼女の滑りも姿勢も…。男性スケーターのなかにも好きな選手はいますが、私が見ていて本当にいいなと思うのは、ラインが綺麗で流れのある滑りができる女性スケーターです。コストナーの足の置き方が好きですし、エッジワークの美しいスケーターが好きです。自分の生徒にも、フットワークや足の置き方にはとても厳しくしています。

コストナーは、長い手足を生かしたダイナミックな動きと、流れのある滑りで高い評価を受けてきた選手だ。ジャンプだけでなく、滑りの美しい選手になってほしい。そうした信念のもと、滑りの基礎に重点を置いた指導が、教え子たちの今の活躍に着実につながっている。

2015年-16年シーズンがもうすぐ終わろうとしているが、グランプリファイナルでも世界ジュニア選手権でも、宮原や本田、白岩ら、濱田の教え子がロシア女子と互角に競り合う試合を何度も目にしてきた。来シーズンに向けて、濱田チームがさらなる躍進を遂げることを楽しみに待つことにしたい。

Mie Hamada: Coaching a New Generation of Japanese Ladies