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ハビエル・フェルナンデスが語る「近くにいる最大のライバル、羽生結弦」

世界記録を2度更新した羽生の活躍が目立つ今シーズンだが、フェルナンデスもまた、昨年のシーズンベストから30点近く高い点を今シーズンの欧州選手権で出している。ボストンで行われる世界選手権で、昨年に引き続きタイトルを守ることができるのか。それとも羽生が世界王者の座を奪還するのか。同門の2人のライバルがどんな戦いを繰り広げるのか、今年も目を離すことができない。

 


世界選手権があと数日に迫っている。男子シングルで表彰台争いに絡んでくると予想されるのが、昨年の世界王者、スペインのハビエル・フェルナンデスだ。サルコウとトゥループの2種類の4回転ジャンプを跳び分ける高い技術力を武器に、今年1月に行われた欧州選手権では、羽生に続き史上2人目となる300点超えを達成した。

ここでは、フェルナンデスが欧州選手権後の電話取材で、カナダのクリケット・クラブで同門の羽生結弦とのライバル関係や、試合で戦うことの難しさについて語っている記事を紹介したい。

 

◆ 完璧な滑りは可能か

フェルナンデスは欧州選手権で302.77点という高得点を出したが、羽生結弦が今シーズンに出したNHK杯での322.40点、グランプリ・ファイナルでの330.43点と比べると、20点から30点もの点差がある。果たしてこの点差は埋められるものなのか。この質問に対し、フェルナンデスは次のように答えている。

試合は毎回違うものです。たしかに、彼があれだけ高いスコアを出したのは、彼が特別なことをしたからです。僕も含め、他のスケーターはぱっとしなかったのかもしれません。僕は同じ試合に出場していました。片方のプログラムが、うまくいきませんでした。試合は毎回異なるもので、選手はその都度違う滑りをします。何が起こるか予測することはできません。たしかに僕たちは、2つの世界記録を目の当たりにしました。彼にはまだ得点の伸びしろがあり、また世界記録を更新するかもしれません。でも彼だって、いつもあれだけの演技ができるわけではありません。全日本選手権では、それほどうまくいきませんでした。彼はミスをたくさんしていました。大切なのは、我慢強く努力を続けることです。僕たちは人間ですから、ミスをする可能性は常にあります。

フェルナンデスが語っているように、選手の滑りは、そのときのコンディションや氷の状態などによって少しずつ異なるものである。ある試合で素晴らしい成績を残したとしても、そのことは次の試合での成功を約束するものではない。フィギュアスケートという競技で勝ち続けることの難しさを感じさせる発言である。

フィギュアスケートで完璧な滑りを追求することについてどう思うかと質問されて、フェルナンデスは次のように答えている。

完璧であることは不可能だと思います。シーズンを通じて、よいときもあれば悪いときもありますから、完璧さを実現できるとは思いません。もし誰かが「彼はこのスポーツで完璧だ」と言ったら、その人は嘘をついていることになります。

男子シングルは、4回転の数と種類を増やす方向へと向かっているが、構成が高難度化すれば、それだけミスをする可能性も大きくなる。フェルナンデスが、フィギュアスケートという競技では、どの試合でも完璧に滑るのは不可能だと語っているように、氷の上での選手の挑戦は常にミスと隣り合わせのものである。

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◆ 近くにいる最大のライバルの存在

昨シーズンの世界選手権では、フェルナンデスが1位で羽生が2位。今シーズンのグランプリ・ファイナルでは、羽生が1位でフェルナンデスが2位。金メダルを競い合うこの2人は、ともにカナダのクリケット・クラブで練習を積んでいる。

(写真)2015年3月、上海で行われた世界選手権で、羽生をおさえて優勝する


自分の最大のライバル選手と同じコーチのもとで練習するというのは、少し奇妙なことではないか。そう質問されて、フェルナンデスは次のように語っている。

僕たちにとっては普通のことです。僕たちはもう慣れていますから。でも、周りから少し変だと思われるのも理解できます。僕たち選手は幼い頃から、自分をトレーニングしてくれるコーチが、自分のライバル選手を教えるということに慣れています。僕とハビエル・ラジャも同じような状況でした。彼は、スペインで2位になることが多い選手です。時にいいこともあり、ちょっとしたけんかをすることもあります。僕たちは人間であり、互いに競い合うアスリートですから。でも自分の最大のライバルが、どうやって練習し、戦っているのかを見られるのはよいことです。これまで積み重ねてきたことと、これからやろうとしていることをお互いに知っているからこそ、一緒に戦う試合がより大きな意味をなすということもあるかもしれません。

フェルナンデスは、スペインの2番手の選手、ハビエル・ラジャの名前を挙げながら、ライバルと同じコーチにつくことには慣れていると語っている。ライバルが日頃から近くにいることの難しさよりも、その選手が試合に備えて練習する姿を見られることが、自分自身の成長につながると考えているようだ。

(写真) 2014年欧州選手権で優勝。ブライアン・オーサーに師事するようになって急成長を遂げた


またフェルナンデスは、羽生とプライベートでも関わることがあるかと問われて、次のように語っている。

一緒に食事をしたり出かけたりはあまりしません。僕たちは、タイプの違う人間です。彼の生活様式は、ヨーロッパ人の僕とは異なります。リンクにいるときに、おしゃべりをしないというわけではありません。僕たちは会話を交わし、笑い合います。よい時間を過ごしています。コーチといるときも、それは同じです。

ヨーロッパ人的に振舞うフェルナンデスと、日本からやってきた練習熱心な羽生。性格の異なる2人だが、リンクでは言葉を交わしたり笑いあったりと、よい交流を持っている様子がうかがえる。

世界記録を2度更新した羽生の活躍が目立つ今シーズンだが、フェルナンデスもまた、昨年のシーズンベストから30点近く高い点を今シーズンの欧州選手権で出している。ボストンで行われる世界選手権で、昨年に引き続きタイトルを守ることができるのか。それとも羽生が世界王者の座を奪還するのか。同門の2人のライバルがどんな戦いを繰り広げるのか、今年も目を離すことができない。

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