FIGURETIC

振付師が語る、羽生結弦のフリープログラム「SEIMEI」

羽生は3月にボストンで開催される世界選手権に出場することが決まっている。シェイリーンが振り付けた「陰陽師」が、2度の世界記録更新を経て、どのような進化を遂げるのか。しばらく目を離すことができない。

 

羽生結弦は、2015年11月に行われたNHK杯でショート106.33点、フリー216.07点、合計322.40点を出し、パトリック・チャンが13年エリック・ボンパール杯で出した世界記録(295.27点)を大きく更新した。さらにその2週間後、スペイン・バルセロナで行われたグランプリファイナルで、ショート110.95︎点、フリー219.48点、合計330.43点を出し、自身の持つ世界記録を塗り替えてみせた。
羽生が今シーズンのフリープログラムに選んだのは、映画『陰陽師』のサウンドトラックからなる「SEIMEI」。振り付けを手がけるのは、昨シーズンの「オペラ座の怪人」に引き続き、シェイリーン・ボーンである。

シェイリーンはカナダ出身の元アイスダンス選手で、2003年の世界選手権で優勝した実績を持っている。現役引退後は、高橋大輔、アシュリー・ワグナー、デニス・テンなど名だたる選手の振り付けを手がけてきた。

フィギュアスケートの選手にとって、プログラムの質や相性は、そのシーズンの命運を左右するものと言える。シェイリーンは自国カナダの取材で、羽生と「SEIMEI」について語った。

 

◆『陰陽師』と出会うまで

記事によると、羽生が『陰陽師』のサウンドトラックを送ってくるまで、シェイリーンはこの映画のことについて何も知らなかったと言う。そのときのことについて、彼女は次のように振り返っている。

私だったら、彼にこの曲を見つけることはできなかったでしょう。彼がこの音楽を心から欲し、惹きつけられていたこと。それが、この曲を選んだ一番の理由でした。

カナダ人のシェイリーンにとって、『陰陽師』という映画はあまり身近なものではなかっただろう。羽生がこの映画音楽で滑りたいと心から願っていたということが、今季のプログラムの選曲の背景にあったようだ。

「オペラ座の怪人」「SEIMEI」と、2シーズン続けて振り付けを手がけるなかで、羽生とシェイリーンの関係は少しずつ深まっていった。シェイリーンは、羽生と今季のプログラムについて、次のように語っている。

彼は情熱に突き動かされるタイプのスケーターの一人で、自分自身が何を望んでいるのかをよく知っています。オリンピックチャンピオンたる選手は、そうあらなくてはなりません。

『陰陽師』のテーマは、羽生によく合っています。映画の中の主人公の姿を、羽生自身の中に見いだすことができますから。

情熱的であると同時に、自分が本当に望むものを見極める冷静さを持っていること。それこそが、オリンピックチャンピオンの資質であるとシェイリーンは考えている。彼女はまた、悪霊を退治する映画の主人公・安倍晴明と、試合で戦い続ける羽生との間に近いものを感じ取っているようだ。

 

◆ 世界選手権に向けて

今シーズンで2度の世界記録更新という快挙を成し遂げた羽生だが、シーズン序盤から好調というわけではなかった。シェイリーンは、今シーズンでの彼の成長について、次のように振り返る。

NHK杯での演技をスケートカナダと比べると、大きく異なります。彼は自分自身をよりコントロールしているように見えました。彼がただ氷の上に立っているだけで、より落ち着いているように見えました。あたかも世界を流れる全ての時間を手におさめていたかのようでした。

シェイリーンはここで、NHK杯の羽生が自分自身をよりコントロールしていたことに注目している。スケートカナダとNHK杯がわずか1か月しか空いていなかったことを考えれば、NHK杯での快挙の裏には、技術面の進化だけでなく、メンタル面での変化も少なからず関係していただろう。

羽生は3月にボストンで開催される世界選手権に出場することが決まっている。シェイリーンが振り付けた「陰陽師」が、2度の世界記録更新を経て、どのような進化を遂げるのか。しばらく目を離すことができない。

Bourne effect taking Olympic figure skating champion Hanyu to a new level